法人あげおNo.173
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TALK ROOM 夏になると来年度の各省庁の予算編成作業が始まり、3月末に向けて予算内容に関して喧々諤々の議論が行われ、マスコミがお祭り騒ぎのような盛り上がりを演出する。見慣れたいつもの光景が広がる。ところが、国の決算書に関する議論はほぼ見ない。非常に簡単な決算概要(見込み)で一般会計の歳入金額と歳出金額が7月に財務省から公表される。具体的には、7月末にいわゆる帳簿を締め、歳入歳出決算を作成し、9月に閣議を経て会計検査院に送付される。会計検査院がこれを検査し、11月に決算検査報告を内閣に提出し、さらに国会へ提出されて審議される。ただし、ここまでの時点で公表されているのは収入と支出に関してだけで、資産及び負債については統一的な公表はない。皆さんの会社であれば、当然のように貸借対照表と損益計算書が1セットで作成されるのに。国の貸借対照表は「財務書類」として3月に公表されている。 この「財務書類」は一般会計と特別会計に基づいて作成された、一般企業でいうところの単体の財務諸表である。株式投資に関心のある方であれば、ご理解いただけると思うが、その会社の財務状況を見るのに重要なのは単体財務諸表ではなく連結財務諸表である。親会社を中心としたグループの子会社関連会社を含めたものである。国もこの連結財務書類を作成し、財務省のホームページで公開しているので、ぜひご覧ください。「国の連結財務書類」と検索すれば、たどり着けます。 連結対象の範囲は、各省庁から監督を受けるとともに、財政支出を受けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人等が含まれている。例えば、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫。国際協力機構(JICA)、各高速道路会社、日本年金機構、年金積立金管理運用独立行政法人など、合計193法人である。 令和5年3月末現在で国の連結総資産は962兆円、総負債は1,544兆円で差引582兆円の債務超過である。えっ、それって破産状態ではないの?と当然思われるでしょう。この総負債の中で大きいのが公債で1,133兆円ある。財政再建が叫ばれる所以である。ところで日本銀行が令和5年3月末現在保有している国債は582兆円である。日本銀行の決算書は、ホームページで公表されているので、ご覧ください。すなわち、日本銀行を含めたところで見れば、582兆円の債務超過は心配ないということになる。これは巷間様々な議論があるところであるが、一つの見方である。ちなみに日本銀行の同時期の総資産は735兆円、総負債は730兆円、差引資産超過5兆円である。 日本銀行は出資金の55%を国が保有している。100%ではない。出資者には何も議決権は付与されておらず、毎決算での余剰金は法定の積立後の残金をすべて国庫へ納付することになっている。これは親会社が子会社の利益を配当金として吸い上げるのと同じことですね。なお総負債の中には当座預金549兆円がふくまれているが、これは償還義務のないものである。お手元の1万円札と同じことである。1万円札も日本銀行の発行した借用証書のようなものである。 ご興味がありましたら、ネット検索で原資料にたどり着いてご覧になってみてください。税理士会上尾支部総務部長 小宮山 司9国の連結決算について税理士談話談話

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