数年前のことになるが伯父の相続手続をした。今まで税理士として相続の申告業務を行い、相続がどのようなものかわかったような気でいたが、自分の身に降りかかった相続は全然違ったものだった。戸籍の取得や銀行手続、遺産分割、登記などは問題なし。一番大変だったのが“家の片付け”。 人間が80年生きていると「物」がこんなに残るのか…衣類・食器などの生活用品から何時貰ったかわからないお歳暮、結婚式の引出物、本が好きだった伯父の₈畳間一杯の蔵書…ひと際多かったのが伯父の母つまり私の祖母の着物。「伯父さん、おばあちゃんは30年前に亡くなっていますよ!」 会えるものなら皮肉の一言も言いたくなるほどの量だった。それも後生大事に防虫剤まで念入りにいれてある。誰も着る予定はないが伯父にとっては大切な品々だったのだろう。しかし、私はあまり「物」に執着が無い。 残すもの・処分するものを容赦なく決めさせてもらい、後は業者の方に引き取ってもらった。それでも埼玉から伯父が暮らしていた福島まで往復する事、月数回を半年。仕事をしている身としては、これがなかなか大変だった… 伯父の家の片付けも終わったころ、ふと実家を見回すと伯父さんの家にあったような「物」が我が実家にもあるではないか。二人家族だった伯父の家、四人家族だった我が家、住んでいた人数に比例して残された「物」も多い。これを何十年後になるかわからないが、順番通りに逝くと年老いた自分が一人で処分することを考えたらゾッとした。 そこで母が元気なうちに断捨離をして貰うことにしたが…これも大変だった。 捨てたい私VS残したい母。 目の前にいる母との攻防には苦労したが、最終的に家の中の「物」を二分の一ほど処分出来た。 手放して₁年半、何不自由なく生活できている。やはり要らない物だったのだ。 昨今、「断捨離」や「ミニマリスト」といった言葉をテレビやネット等でよく聞くようになった。私も「YouTube」などで拝見している。そこまでストイックには出来ないが「立つ鳥跡を濁さず」、いつになるかはわからないが、この世からおさらばするときは家族にかける迷惑を最小限にしたいと思う出来事だった。関東信越税理士会 上尾支部財務部長 武智 絵美税理士談話− 9 −相続を経験して
元のページ ../index.html#9